前提:「損する」とはどういう意味か
「扶養に入ったまま働くと損」という話をよく聞きますが、これは少し誤解を含んでいます。正確に言うと「年収を少し増やしたことで手取りが逆に減る年収帯がある」ということです。
たとえば年収105万円から115万円に増えたとき、社会保険料や税金の負担が一気に増えて、手取りが105万円のときより少なくなる場合があります。この「頑張って稼いだのに手取りが減る」という現象が「損する」の本質です。
・週所定労働時間:20時間以上
・配偶者あり(年収500万円以下)
・2025年税制改正後の数値を使用
106万円の壁前後でシミュレーション
まず社会保険の壁(106万円)前後を見てみましょう。この壁を超えると健康保険・厚生年金への加入が必要になり、保険料として給与から約14〜15%が天引きされます。
| 年収 | 社会保険料 | 所得税 | 住民税 | 手取り | 前行との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 100万円 | — |
| 105万円(扶養内上限) | 0円 | 0円 | 約0円 | 105万円 | +5万円 |
| 110万円 | 約15.6万円 | 0円 | 約0円 | 約94.4万円 | −10.6万円 |
| 115万円 | 約16.3万円 | 0円 | 約0.5万円 | 約98.2万円 | +3.8万円 |
| 120万円 | 約17万円 | 0円 | 約1万円 | 約102万円 | +3.8万円 |
| 125万円 | 約17.7万円 | 0円 | 約1.5万円 | 約105.8万円 | +3.8万円 |
表を見ると、年収105万円(手取り105万円)から110万円に増やすと、社会保険料が約15.6万円発生して手取りが約94.4万円まで落ちます。5万円稼ぎを増やしたのに、手取りは逆に10万円以上減っているのです。
手取りが扶養内(105万円)を超えるのは年収125万円前後になってからです。つまり106〜125万円の年収帯は「損する年収帯」と言えます。
130万円の壁前後でシミュレーション
50人以下の企業で働く場合、または106万円の条件に当てはまらない場合は、130万円が社会保険の最初の壁になります。
| 年収 | 社会保険料 | 所得税 | 住民税 | 手取り | 前行との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 120万円 | 0円 | 0円 | 約1万円 | 約119万円 | — |
| 129万円(扶養内上限) | 0円 | 0円 | 約1.9万円 | 約127.1万円 | +8.1万円 |
| 135万円 | 約19.1万円 | 約0.6万円 | 約2.4万円 | 約112.9万円 | −14.2万円 |
| 140万円 | 約19.8万円 | 約0.9万円 | 約2.9万円 | 約116.4万円 | +3.5万円 |
| 150万円 | 約21.2万円 | 約1.5万円 | 約3.9万円 | 約123.4万円 | +7万円 |
| 160万円 | 約22.6万円 | 約2.1万円 | 約4.9万円 | 約130.4万円 | +7万円 |
130万円の壁でも同じことが起きます。年収129万円(手取り約127万円)から135万円に増やすと、社会保険料が約19万円発生して手取りが約112万円まで落ちます。6万円稼ぎを増やしたのに手取りは14万円以上も減ります。
手取りが扶養内上限(129万円時の約127万円)を超えるのは年収160万円前後になってからです。
年収ごとの手取り一覧(大企業勤務・週20h以上)
大企業に勤めて週20時間以上働く場合の年収と手取りの関係をまとめました。
グラフを見ると、110万円と130万円のあたりで明確にバーが縮んでいます。年収が増えても手取りが減る「逆転現象」がはっきり見えます。
本当に「損する年収帯」はどこか
シミュレーションをまとめると、損する年収帯は次のように整理できます。
・130万円〜約158万円:130万円の壁でさらに社会保険料が増加。手取りが129万円以下になる
逆に言えば、この範囲を避けて働くことが手取りを最大化する鍵です。具体的には次の3つの戦略が有効です。
扶養を外れるなら年収いくら目指すべきか
戦略①:扶養内上限ギリギリで止める
106万円の壁が適用される場合は年収105万円前後、適用されない場合は年収129万円前後に収めるのが最も手取りが多くなります。「損する年収帯」を完全に回避できます。
戦略②:割り切って扶養を外れ、年収160万円以上を目指す
社会保険料を払っても手取りが扶養内を上回るのは年収160万円前後です。将来の年金・各種手当も考えると、160万円以上に収入を増やすのが長期的には有利です。フルタイム勤務や時給アップ交渉を検討しましょう。
戦略③:年収200万円以上を目指す
手取りベースで「完全に扶養外れが得」になるのは年収200万円を超えたあたりです。キャリアアップや転職も含めて、中長期的な視点で判断することが重要です。
まとめ
この記事の内容を整理します。
・それを超えると社会保険料が発生し、手取りが一時的に大きく減る「損する年収帯」がある
・損する年収帯を抜けるには160万円以上を目指す必要がある
・長期的には社会保険加入にも年金・手当のメリットがある
自分の年収が今どの壁に近いのか、手取りがどう変わるかは個人の状況によって異なります。以下のツールで実際の数字を確かめてみてください。